メッセージ

日本産婦人科医会 会長木下 勝之

写真

妊婦さんと育児中の母へのメッセージ

 わが国の周産期医療を担当する産婦人科医、助産師、そして小児科医等は母と子の安全を第一に考えて、新生児の脳性麻痺と母体死亡をいかに減らすかに対して、行政の支援も得て、長年にわたり原因を究明し、発症予防法を改善してきました。その結果、脳性まひ児に対する補償と原因分析を目的とした産科医療補償制度が発足し、今年で10年を迎えました。その原因分析と再発予防対策を診療の現場で、実施してきた結果、脳性麻痺の発生は明らかに減少しました。また母体死亡は、分娩100万件に対して、40件まで減少し、世界一低い発生率になりました。私どもは、今日では医療安全を基本として、さらに妊婦さんの心のケアにも目を配り始めました。心の悩みで日常生活ができなくなったり、育児が不安であったり、うつ傾向等で悩む妊婦さんを対象に、妊産婦メンタルヘルスケアの体制を全国に張り巡らせました。この取り組みは、医療界だけのものではなく、地域の若いママ友の間での妊婦に対するサポートも大事な役割になっています。

 この「ひまわりの会」の発足の理念は、「花」によって人々の心を癒し、「花を贈りあう」ことによって人々の心を繋げよう、というものです。

 診療所や病院の夏の庭や玄関先をみると、ひまわりやアサガオ、そしてペチュニア等の花が、妊婦さんの目を引きます。多くの妊婦さんは足を止めて、眺めて、心が癒されるものですが、花を見ても、心が晴れない妊婦もいるのです。今日では、親が離縁したり、自分が親に嫌われて育ったり、虐待を受けたりした妊婦等が増えていますが、その人たちは、母親としてのモデルを持たずに成人したため、子供にどのように対応するのがよいのかわかりません。現代の日本は、IT化とAI化によりスマホ社会になりました。スマホ一台で、過ごすことができる時代になったのです。社会は人間同士の関係性により成り立つものですが、スマホが社会に出回って10年たった今では、母親の育児はスマホが担当する時代になりました。乳幼児に対する母の触れ合いや話しかけ抱きしめ等に応える子には、愛着が形成されます。スマホに依存する人たちの社会では、親と子、人と人、男と女等の関係性は希薄になるでしょう。益々妊産婦のメンタルヘルスケアが必要な時代になると考えています。

 私どもは、「花によって、心が癒される」という「ひまわりの会」の精神に沿った活動を一層強化したいと思います。

他のメッセージを読む

メッセージTOPへ