メッセージ

建築家/東京大学名誉教授安藤忠雄

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「人を育てる」

近頃、若者たちの多くが無気力に見える。
特に、1980年代生まれの子どもたちは問題が多いといわれています。
彼らが育ったのは、日本のバブル経済が絶頂期を迎えた時期に重なります。この国が永遠に発展していくものと、錯覚した親たちは、子どもたちを必要以上に過保護に育て、 いたれりつくせり、求めるものを与え続けてきました。
その結果、自立心や決断力に欠けた若者たちが、社会にあふれ、今、深刻な社会問題となりつつあります。

日本の未来のためにも、子どもを育てるということの大切さを、もう一度よく考える必要があると思います。少子化がすすむ今だからこそ、命がけで、勇気と責任感、そして自立心のある子どもたちを育てていかなければなりません。
子どもをもったなら、せめて15歳位までは、親は子育てを人間として一番重要な「責務」と認識して、心をこめて子どもを見守ってほしい。人間としての善、悪の判断ができるよう基本的なことを親が教えてほしい。
子どもの将来を夢想するあまり、小さいころからの習い事や、学習塾通いを強要したりしないでください。子どもたちは友達と遊び、大声をはりあげながら、野原を走り回ったり、生き物と触れ合ったりする中で、判断力や協調心、命あるものへの愛情といったものを、自然に身に着けていくものです。その貴重な時間を子どもたちに提供するのも、親にとっての責任です。

これからお母さんになる皆さん一人ひとりが、母親という任務の重さを充分、意識して、 生まれてくる子どものために、自分が何をなすべきかを、ぜひ考えてみてください。

一人の人間を育てること以上に重い仕事はないはずです。

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